アメリカンドリームの後始末

アメリカンドリームの後始末

第1話「市民権取った男が、帰国して最初にやったこと」


人間、追い詰められると馬鹿になる。 少なくとも俺はそうだった。

アメリカで20年。寿司も握った。古着も売った。市民権まで取った。 帰国して最初にやったことが、詐欺スクールに80万円払うことだった。


マッサージセラピストとして再起するつもりで帰ってきた。 アメリカではそれなりに通用していた。だから舐めていた。

客が来ない。来ても続かない。 日本のマッサージ市場は資格と価格競争が激しい。アメリカ仕込みのやり方が通用するほど甘くなかった。

焦りがアトピーを悪化させた。身体まで壊した。 20年ぶりの日本で、俺はすでに詰んでいた。


そこに「独立して月収100万円」という広告が刺さった。

今思えばわかる。完全にカモだった。 追い詰められた人間がいかに判断力を失うか、あのとき身をもって証明した。

最初の情報商材、30万円。 内容はゴミだった。

それでも諦めなかった。正確には、諦められなかった。 次に飛びついたせどり転売スクール、50万円。 稼げなかった。

合計80万円。 借金だけが残った。


今は古物商の買取査定で8年目になる。 毎日誰かの「手放すもの」を査定しながら思う。

あの80万円、今となっては笑い話だ。 ただし、笑えるようになるまで数年かかった。

アメリカンドリームの後始末は、思ったより手間がかかる。

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